お寺の造園工事をご紹介いたします。

庭を造るにあたってのご住職からのご要望は「葬儀や法事などの際に本堂から皆様に眺めていただける庭を」というものでした。
こちらの庭は、本堂からも眺められる景色を作りながら、多方面から鑑賞できる庭にするために、各所にポイントを設けています。

庫裡の入り口には、よく吟味して選んだ二月堂形灯篭を据えました。
この立灯篭の本歌は奈良の東大寺にあり、法華堂形とも呼ばれます。笠は六角型で、火袋の意匠は派手さはありませんが品が良く、立ち姿も美しい灯篭です。
和の庭園では蹲を組むことが多いのですが、今回は角付の井筒を用いました。
石を組んだ井戸囲いの素朴な景色は、訪れた人が畏まることもなく、どこか郷愁も感じさせてくれます。
井戸蓋には、新しい庭の完成をイメージさせる青竹を使いました。


境内には駐車スペースも設けるため、庭は庫裡の玄関前に作っています。この後、周囲に砂利が入り完成となります。
庫裡へと向かう園路にはミカゲ石の舗石(平板)を使用しています。石の表面を細かく叩き、繊細に仕上げた『こたたき仕上げ』のものです。


本堂からの眺めは、御簾垣を背景にした和の庭です。
本堂からは見下ろす形になるため、高さを出したサツキの島を左手に配置し、奥行きと立体感を出しています。
井筒に向かって枝葉をさしかけるカエデの下に二月堂灯篭が立ち、奥の石組みへと視線を誘います。


Before|After


広い境内の一角に、和の庭が出来上がりました。
本堂から鑑賞する視点を重視し、かつ、庫裡へ向かう園路からの視点を意識して素材を配置しています。
庫裡へ向かう園路の庭への入り口では、うねる枝ぶりが美しい梅の樹々と、波をかたどった現代的なデザインの飾り瓦が出迎えます。
庭を仕切るラインには川の玉石を用い、通年を通して緑を保つリュウノヒゲの海を作りました。


お寺の屋根には雨樋がないため、軒下には「雨落ち」と言う雨水を処理するための設備を設けます。
軒下を土のままにしておくと、降雨時に軒下に水溜まりができてぬかるんだり、泥跳ねが起き歩行が困難になってしまいます。
屋根からの雨水が落ちる箇所は、地下に暗渠の排水路を設け、上部には那智黒砂利を入れて川石で留めました。


施工中の様子
竹垣の施工が終わり、丁張をかけています。
庫裡と本堂へ向かう通路に、仮設の園路を設けています。
木を植え戻し、灯篭を据えます。
石などの材料を搬入し、石組が始まりました。
気勢を見ながら、石を組んでいきます。
石組みは本堂からの眺めを意識しつつ、多方向からの鑑賞にも耐えるよう、石を視ながら慎重に据えて行きます。
庭と雨落ち部分の完成です。
カシ、梅やカエデなどの高木はすべて既存樹です。根回しをして掘り上げ、新しい場所に植えなおしています。
移植工事は時季も選び手間もかかりますが、新規の樹木を安易に使わず、歴史のある木々を庭で活かすことも、木をあつかう私たちの大切な仕事です。